コロナ禍でおうち時間が長いためかマスコミでも多く取り上げられているせいか、今まで家事に関心が薄かった私ですが、このところ生活のことに目がいくようになりました。
忙しいお母さんたちのテーブルが少しでも心ゆたかなものになるといいなぁと、お母さんの手づくりお菓子の味をめざして開店したココテラス。そして、「今日は疲れたからご飯ごとをするのは嫌だな」と思った日でも、「これならやってみたい」と背中を押してくれるようなたまご料理のレシピをお持ち帰りできる農家レストラン、レシピヲ。実は私の主婦としての思いが詰まっています。
農家に嫁いで40年。振り返ってみれば、家事育児はずいぶんと手抜きをしてきたように思います。農家と言っても私自身は事務仕事が中心。皆さんがイメージするような農作業はあまり経験がないのですが、わからないなりにも経営者の伴侶として家業をサポートするのに必死だったなぁと今更ながらに思います。
当然(と開き直る)、家事は完璧にはできません。掃除の行き届いた家で手作りのお漬物や保存食、おやつにはオーブンでお菓子を焼いて・・、などの生活は夢のまた夢。でも同居していた義母は、実際に鶏の世話をしながら、野菜をつくり、梅干をつけ、お祭りにはお寿司をつけ、お節句にはヨシの葉を刈ってきてヨシ巻きをつくるという、古き良き日本の伝統を実践していました。一昔前の田舎ではあたりまえの生活ですが、今から考えると憧れの暮らしともいえるのではないでしょうか。
一方、ぐうたらな私はとうにそんな真似はできないと諦め、「自分のできる範囲で」と、いろいろ手を抜くのですが、やはりそこは家族や子供たちには申し訳ない思いが残るのです。
何でも便利なものが手に入る今でも、いえ、だからこそ、みんな家庭のために手作りの丁寧な暮らしをしたいと思っていると思うのです。でも忙しい現代のお母さんにはなかなか実践することは難しい。そしてかつての私がそうだったように、そんな自分は家族に対して申し訳ないという気持ちを少なからず抱いていらっしゃるのではないでしょうか。「大丈夫だよ、すべて手作りでなくてもいいよ。」「忙しい時にはレトルトハンバーグに目玉焼きをのせるだけでもいい、十分お母さんの気持ちは伝わるよ。」と言ってあげたい。「お弁当づくり大変だね。毎日たまご焼き、美味しそうに焼けて偉いね。」と褒めてあげたい。当時、忸怩たる思いを抱えていた私に声をかけてやりたいと思うのです。
きれいな黄色のたまごはしあわせなテーブルのシンボル。
日々忙しく、同じような思いをされているお台所を守るあなたのお手伝いができたら・・。そして、お休みの日には家族一緒にお菓子づくりにも挑戦してみようかなという気分になっていただけたら・・。そんな思いからできたココテラスの丘、皆さまのお役にたてれば幸いです。
デイリーファーム副社長 市田 千文