昭和30年代の生まれです。
このところ、世界が日本がどのように発展をとげてきたのかをTVなどの映像で垣間見ることが多くなりました。歳を重ね、知らず知らずのうちに私が選択しているのかもしれません。
若い頃、「お年寄りはなんで口うるさいことをいうのだろう、お説教がましい。」と思っていました。
今、その気持ち、よく分かります。心配なんです。だからこれからの人たちに伝えたい、自分の過ちを繰り返さないように、そして、こうしたらもっとうまくいったのではないかということを・・。
戦後から間もなく、日本はすごい勢いで経済成長を果たしてきました。その裏には公害問題や熾烈な労働環境で働く人々の存在がありました。
公害がテーマの課題図書で感想文を書いたのは5年生だったでしょうか。親の世代は暗くなるまで働くのは当たり前の世の中でした。ただ一方では皆、夢と希望をもってそれぞれの目標に邁進していたように思います。ノスタルジーではありません。これからが心配なのです。
災害が以前に増して多くなった気がします。世界の安全保障も揺らいでいます。日本への資材や食料の安定供給にも不安があります。
私が漠然と思い描いていた未来、今よりきっとよくなるという暢気な観測は、いかに頼りない均衡のもとに成り立っていたのか、今までの時代がいかに恵まれていたのかを思い知らされるこの頃です。
こういった状況の中でも私たちは幸せになっていかねばならない。
人は幸せになるために生まれてきたのだと思うからです。
『男はつらいよ』の山田洋次監督がおっしゃっていました。「生きていてよかった」と思うことがあればそれが幸せなのではないか、と。そして、戦後貧しかった山田少年にかけてくれた屋台のおばさんの親切が、自分の人生や作品に大きな影響を与えているとも。
厳しい時代にこそ、誰かに、「生きていてよかった」と思ってもらえる行いは輝くのでしょう。農業が礎のデイリーファーム、私たちには画期的に世の中を変えることはできません。「この国の食を守る」という農家のもっとも大切な使命を誇りとして、小さな「美味しい」「楽しい」を積み重ねていただくことで「周りの人をしあわせにする」を目指してまいります。山田監督の『幸福の黄色いハンカチ』に描かれるように、たまごの黄色はしあわせを象徴する色。
「生きていてよかった」は大げさにしても、たまごを通じてひと時でもこれからの世代を担う人たちにも「ほっこり嬉しい気持ちになった」と思っていただけますように。そして、ココテラスの丘が「ワクワク楽しい」そして「しあわせ」と感じていただける場となりますように。
これからもスタッフ一同、突っ走ります。
デイリーファーム副社長・市田 千文